2013年7月16日火曜日

新作『カンロ』に向けたプレ稽古の発表会をします

鳥公園は10月の終わりに、三鷹の星のホールで『カンロ』という新作を発表します。
この作品に向けて、今月に入ってから数回のプレ稽古を行っています。

プレ稽古は、鳥公園としては初めての試みです。
演出家の気になっている事柄を、気になっている方法で、試しています。
このプレ稽古の最終日に、発表会をすることにしました。
これはその、お知らせです。
発表会と言っても、いわゆる「公演」とはだいぶ違っています。

このプレ稽古と発表会の目的は何かというと、
第一は、俳優と演出家との間に、共有できる地盤、足場をつくること。
第二は、それをスタッフの方々に 見てもらって、早い段階から、何をやろうとしているのか、今回集まった座組みがどんなチームなのかをイメージしてもらうこと。
第三は、「公演本番の作品」という以外のかたちで、鳥公園の創作について、お客さんに伝える機会を持つこと。です。

今回、こういうプレ稽古と発表ということをしたい、と言ったとき、
俳優と演出助手から様々な反応(不安、疑問、反発)がありました。
自分ではいいアイディアだと思っていただけに、ちょっとびっくりするくらいの反応でした。

で、俳優と、演出助手と、話をしました。
主に、「『作品』を人に見せることをどう考えるか?」ということについての話です。

  *   *   *

「作品」というものが、どこからどこまでを指すものなのか、私は少しずつ、分からなくなってきています。
少なくともそれは、演劇の場合は、舞台上で起こることだけではないと感じています。
例えば観客も作品の一部で、その人たちの空間に対する居かたをどうデザインするか(しないか)が、私の作品にとっては大きいようだ、というのが最近分かってきたことです。

だからいつも、初日を迎えてみるまで分からないことが多すぎて、困っています。
「同じお客さん」ということは二度とあり得ないのに、それでも、
ある会場で、ある作品を上演したときにどういうことが起こるか、というのは、
初日でずいぶん色々なことが分かります。
そのことを初日のお客さんに、申し訳なく思います。
「稽古が間に合っていない」というのとは別の問題で、どれだけ想像しても分からない部分があって、どうしたらいいんだ?と思います。

なので、出来るだけお客さんの前で発表する機会を持ちたい、そしてその後にまた制作期間も持ちたい、と思います。
そう思って去年から、そういう作り方をしています。

作品のクオリティを上げるというのはどういうことなんだろう?と考えたときに、
作品世界の内向き(?)に向かって、たくさん練習して、フィクションを強固に作り上げていくという方向だけでは、限界がある。
もちろん、そういう稽古を怠けるという意味ではないんですが、 なんというか、稽古ってそういう向きだけなのか?そうじゃないんじゃないの?という気がしています。
つまり、稽古場で、お客さんがいない状態でやれる稽古には限りがあるということ(特に私の作り方の場合は)。

「作品」って何なのか。
観客が作品と、作品を通じて、どういう関係を結べたかということが作品、
と、書くとまやかしみたいな感じですが、今のところしっくり来ている言い方はこれです。


精巧に出来上がった鑑賞物になりにいく稽古は、違うんじゃないか。
そういう風に準備をすると、舞台上だけで完結する作品になってしまうんじゃないか。
で、作り手側がそういう風に、パッケージングを完了した状態で作品を用意することは、観客を消費者にしていくことにつながるんじゃないか。
という思いがあります。

  *   *   *

作り手が、何をやろうとしているのか、言葉にしていってもいいだろうと思っています。
昔は、言葉にするなんて野暮、と思っていたのですが、作品をもっと楽しんでもらえることにつながるなら何でもやろう、というのが今の気持ちです。

あくまで、 4日間の稽古で試している、という状態のものです。
公演本番を迎えるまでには、余計なもの、「ナシだなー」というものをどんどん削いでいく方向のことが、特に稽古の最後の方の時期に起こりますが、今回はまだ「これをやりたい、やってみよう」がどんどんくっつけられて大きくなっていっている段階です。

「そんな生半可なものをお客さんに見せるのは失礼なんじゃないか?」という声が俳優から出ました。
そう思うのも、わかる。
けれど私は、 まだ全然固められていない生の状態だからこそ、立ち会った人と作り手との間で交わせる言葉もあるような気がしているのです。
そしてそれはきっと、10月の『カンロ』の公演本番にとって重要なことになってくると思う。

だから、公演本番のときは、「作品をつくりました。是非来てください!」と言いますが、
今回は、「もしも今、鳥公園がやろうとしていることに興味のある方がいたら、公開しています」という言い方になります。
生半可では、あります。
でも何もないわけではなくて、むしろ色々あります。
そういうものに立ち会ってみたいと思う方、お越しいただけたら嬉しいです。

  *   *   *

鳥公園#8『カンロ』に向けたプレ稽古の発表会

構成・演出 西尾佳織
出演 森すみれ(鳥公園)、伊藤俊輔(ONEOR8)、笹野鈴々音、武井翔子、実近順次、鳥島明(はえぎわ)

■日時 7月21日(日)19:30~
(お待ちいただく場所がないので、19:20~19:30の間にお越しください)

■場所 白山の稽古場
(会場の正確な場所は、お申込みいただいた方にお伝えします)

■参加費 無料
  見ていただいた後に、ご意見・ご感想をお話しいただけると嬉しいです。

■お申込み方法
件名を「プレ稽古発表会申し込み」とし、本文にお名前(フリガナ)とお申込みの理由を明記の上、info.birdpark☆gmail.comまで(☆を@に変えて)ご連絡ください。
お申込みなしでの、当日参加は受け付けておりませんのでご注意ください。

よろしくお願いいたします。